「鶴島と毎晩5本勝負の試合をするようになって、夏休みが過ぎた頃、『夏休みに親戚のところに行ったらロングというのをやるんだ』と鶴島が言ったのです。」

「『ロング?』と聞くと、それらしい動作をしてみせるのですが、全く理解できませんでした。」

「それで、どうしたのですか」と町会長。

「次の日曜日に、15キロほどある市内の本屋さんに自転車で行って、卓球の本を探しました。」

「卓球の本は見つかったのですか」と町会長。

「分解写真の載っている本があったので、買ってきました。」

「その分解写真を見て、ロングの打ち方を練習したのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。僕は、その分解写真を見て、遠心力を使うようにすれば、安定した強い球が打てると考えた記憶があります。」

「なるほど。」

「毎日、素振りをして、どう振れば遠心力が使えるか研究しました。」

「鶴島という男の子は、どうやってロングを覚えたのですか」と町会長。

「週に1回ぐらいの頻度で親戚のところへ出かけたみたいです。」

「なるほど。」

「ロングは、すぐ、できるようになったのですか」と町会長。

「会館の倉庫は狭くて、卓球台の後ろが1メートルぐらいしかなかったのです。」

「それでは、ロングの練習はできませんね」と町会長。

「そうなんですよ。ちょうどその頃、倉庫が傷んできたので取り壊されてしまいました。」

「倉庫が取り壊されたら、卓球はできませんね」と町会長。

「そうなんですよ。それで、残念に思っていたら、父が『熊野神社の神楽殿に卓球台が置いてあるよ』と言うのです。」

「すぐ近くにある神社に神楽殿があったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。僕が子供の頃は、秋になると、そこでお祭りがありました。夜店がたくさん出て、綿あめを買ったり、金魚すくいをした記憶があります。」

「神楽殿は、お祭りのときに使われたのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。夜になると、神楽殿で旅回りの役者が演じる田舎芝居が行われました。」

「その神楽殿に、卓球台が置いてあったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「そこで鶴島とロングの練習をしたのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。倉庫と違って卓球台の後ろが2メートルぐらいありました。」

「それなら、ロングの練習ができますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。秋川街道から見えるところにあったので、最初は色々な人が来ました。雨の日は、大人の人も来ていました。」

「それでは、大人の人も交えて5本勝負の試合をしていたのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」
 
2021/4/19

<筆者の一言>
『頭が緩もうとしているようだが、髪の毛が強い陰なので緩まないようだ。DMAEを1錠飲んでみな』と言って、1錠手渡した。息子は他に方法が思いつかなかったらしく、その場で1錠飲んだ。すると、数分後には、顔つきが元に戻っていた。

『髪の毛が強い陰なので緩まない』が原因なのだから、髪の毛を切ればいいのだが、息子には髪の毛に対する強いこだわりがある。こだわりがあるのは息子だけではない。人間は、皆、何かにこだわりがある。そして、自分はこういう人間だと自分自身で自分を定義し、その定義に従って不自由に生き、そのこだわりのために陰陽が分かる天才系でも陰の物で経絡を進行させて死んでいくのだ。

例えば、商人系の場合、金儲けにこだわりがある。そのため、1分1秒を惜しんで働く。陰の物でも売れれば売る。買った人が陰の物で経絡が進めば、自分にも経絡の進行が返ってきて死に近づくのだが、そのことは理解できない商人系が多いようだ。

しかし、梅澤さんが働いている丸善スポーツの社長は、商人系だが陰の物を売ると自分の体力が低下することに気がついている。それでは、陰のものを売らないかというと、そんなことはない。<続く>

2024/4/9